最近,限定生産で今までありそうでなかったあれやこれやをリリースし,日本中の飛行機モデラーを予約のために模型店に走らせたAIRFIX。
今度は,1/72でVICKERS VALIANTですと・・・
最近のキットは,箱を開けただけで部品の多さに圧倒され,どっと疲れが出るようなものばかりと感じている方はいませんか?
◯セガワのマイ◯ーとか,バ◯ダイのメサイ◯バ◯キリーとか,タミ◯のエンツ○・フ○ラーリとか・・・
でも,AIRFIXがやってくれました!!
このキットは組める!!・・・かもしれない・・・。

主翼の部品のランナーがこんなに大きい
<"3V BOMBER"について>
第二次大戦後の冷戦下,イギリスの航空省は,イギリス空軍が運用するためのジェット・エンジンを4発搭載する核爆弾搭載可能な戦略爆撃機を要求,それに応えてイギリスの航空機会社3社の3機種のプランが実用化された。
ビッカース社(帝国海軍の戦艦金剛の製造元)のヴァリアント,ハンドレページ社(ハンドリー・ペイジ社とも記述。映画"魔女の宅急便"で夜間飛行していた旅客機は,同社のH.P.42)のヴィクター,アプロ社のヴァルカン(当blogでこの間紹介済み)である。どの爆撃機の名前も"ヴ"から始まる・・・ということは・・・英語の綴りでは"V"から始まっているため,3V BOMBERと呼ばれた。
当時,戦勝国とはいえ,そんなにお金に余裕がなかったはずのイギリスが戦略爆撃機を同時に3機種開発し,実用化して運用するなどナンセンスとも思えるが,おそらく,
・ジェット機が実用化して日も浅いし,開発に失敗して仮想敵国やアメリカに差を付けられるのは困るナ。
→3機種のうち,どれかか成功すれば,もうけものダヨ。
→あらら,3機種ともそれなりに飛んでしまったヨ・・・。
→うーん,どの会社が倒産しても失業者が出て困るしぃ,3機種とも採用!!
ということになったのだろう。
ヴィクターは,異様な胴体に三日月翼の組み合わせ(3機種のうち最も高速,緩降下時にマッハ1を突破),ヴァルカンが無尾翼の巨大デルタ翼機(比較的レーダーに捉えられ難く,大型機にしては軽快な操縦特性を持ち,低空ではバレル・ロールも可能)と,どちらもぶっ飛んだ設計(でも,3機種ともエンジンを主翼付け根に埋め込むという点では同じ)だったため,もっとも保守的な設計のヴァリアントは,最も実用化に近い機種であった。
<実機について>
ロール・アウトしたヴァリアントは,全面ベア・メタルの銀ピカ。爆弾倉には通常爆弾がどっちゃりor核爆弾1発。1955年から就役し、イギリス初の核爆弾投下実験や水爆実験にも使用された。もし,戦争が続いていて,こんなんが飛んできたら,震電改をもってしても撃墜は難しかっただろう・・・。
しかし,後発でより高性能なヴァルカンやヴィクターが実用化し,ヴァリアントは,空中給油と爆撃任務兼用機となり,更にその後,機体構造に問題が発見されたため,1965年には全機退役してしまった。
<キットについて>
実機は,核実験に貢献している"悪もん"だし,実用機としてはダメダメだったわけですが,このキットは,何とはなしによいです。
箱を開けたとたんに感じた「組める」という予感。誤解でなければいいのですが。この予感を信じたい!!
在庫に1/72でヴィクター(マッチ・ボックス改めドイツ・レベル)もヴァルカン(MPCだけれど元AIRFIX)もあるのだけれど,あやつらは相当苦しまないと完成しない気がする。完成したら完成したで3つ並べたら絶対に奥さんにしかられる・・・。

一緒においているのはイタレリの1/72ラファール
「完成できそう・・・」なんて書いていますが,そこは,それ,それなりに谷あり山ありを経験させられると思います。
1 最近のAIRFIXの新キットに多く見られるように梨地の表面に筋彫りがされています。プラスチックに厚みがあるところにはヒケが多く見られるので仕残しが無いようにパテで埋めて表面をならしておくとよいでしょう。
2 垂直尾翼にでかい出っ張りがあってその上にデカールを貼るようになっています。きっとどんなに強力なマークソフターを使ってもきちんと貼れないでしょう。モデルアート誌のレビューでは,「そこのところを切り欠けばいいんだよ」みたいな記述がありますが,切り欠きのアタリはどうやってつけるのでしょうか?
とりあえず貼ってみて,現場合わせで切り欠きを入れて,できるだけマークソフターでなじませる。→デカールの破れ目のところを塗装でリタッチする。という作戦を考えていますが,リタッチのときの塗料の色合わせが難しいなぁ・・・。
3 これまた,モデルアート誌のレビューで指摘されていたジェット・インテークの部品の合わせ目の処理。これは,相当,苦労することが予想されます。
とりあえず,接着して,できるだけきゅっと押さえつけて,接着剤が乾いたら,合わせ目にパテを盛るor瞬間接着剤を塗る。
1週間ほど放置する。
昼休みとか,暇なときに丸めたサンドペーパーですりすりする。
飽きたら,部品をなくさないように注意して放置する。
何度か繰り返すうちに段差が消えたような気になるので合わせ目にときパテを塗る。
許せたらそのまま仕上げる
許せなかったらもう一度パテを盛る。
ここが上下分割でなく,インテークの穴の方向に合わせた一発成型の部品だったら楽勝なのですが,きっとそんなことをすると金型のコストが上がるのでしょうね。
4 これまた,これまた,モデルアート誌のレビューで指摘されていますが,今時なかなか見られない垂直尾翼に強引にブーメランのような水平尾翼を挟み込むという設計。こらえてちょうだい。うまく組み込む自信無いです。しかも,きちんと水平尾翼が奥まで入らないし・・・。
5 主翼の翼端のところが変形していました。指で押さえてなじませれば,何のこともない不具合です。プラスチックが柔らかいから,すぐ曲がるけれどすぐ治ります。主翼は,上面の部品を胴体にしっかり接着してから下面の部品をそれにフィットさせて接着していくとよいと思います。主翼上面の部品は,後部の高さがわずかに足りず,そのままだと機体のラインが若干ぎくしゃくします。ここの処理は,本格的に組むときに,現場合わせで対処しようと思っています。
でも,こうやって仮組してみると,これが,なかなかかっこいいんですわ。
AIRFIXさん,やったね!!
<いらんこと>
・・・いつもお世話になっているお店は,GS◯クレ◯ス経由でAIRFIXのキットを入れてくれているのだけれども,その場合,ビーバーさんが並行して輸入しているAIRFIXのキットは,とっくにお店に出ているのに◯SIクレオ◯からのキットはなかなかやってこないということが多々あります。
このヴァリアントのキットもそうで,いろいろな通販ショップで売られはじめているのにこちらにはいっこうに入荷せず,入手できるかどうかやきもきしました。ところが,あなた,1ドルが80円をかなり切ったあたりであっさり入荷(ユーロも連動してかなり安くなってました)。そりゃぁ,為替の差益で儲けるのも企業としては正しいのかもしれませんがね。